略歴
昭和38 年3月:奈良女子大学理学部生物学科 卒業
昭和43 年3月:神戸大学医学部 卒業
昭和48 年6月:神戸大学医学部公衆衛生学講座 助手
昭和52 年7月:兵庫医科大学公衆衛生学講座 助教授
平成5年11 月:兵庫医科大学公衆衛生学講座 教授
平成15 年7月:内閣府食品安全委員会 委員(常勤)
講演要旨
数十年前までは食品の安全性を自らの五感に頼って判断していたが、冷蔵庫の普及や食品の衛生面が確保されるにつれて、賞味期限や産地、含有成分、加工方法など、全て表示されている文字を通してその安全性を判断するようになった。消費者は最近の抗菌グッズの普及と相まって、食品に対しても行政の監督の下、生産・製造者や流通業者が完全に安全な物を提供すべきであるという意識が強くなり、全ての食品に対してゼロリスクを求める風潮にある。
わが国でここまで消費者に安全、安心を求めさせるきっかけとなった要因の一つに、SE(牛海綿状脳症)の発生がある。1986
年英国で発生したBSE は、現在18 万頭強に及ぶ英国以外に、世界中の多くの国で現在も発生が続いている。
さらに1996 年には、人の変異型クロイツヘルト・ヤコブ病がBSE 発症牛の危険部位を食べることにより発症することが報告された。わが国は自国にはBSE
は発症しないと高をくくっていたところ、2001 年9月、BSE 感染牛が確認されたことにより、政府の食品に対する安全管理に対して、国民に強い不信と不安を抱かせる結果となった。この危機を乗り切るため、同年10
月、直ちに牛の全頭検査を行い、この措置が食の安全を確保する重要な施策であるという誤った認識を国民に与える結果となった。
さらに食の安全に関する評価と管理が同一省庁で行っていたことが、消費者を軽視した生産者よりの施策であったという反省から、平成15
年5月食品安全基本法が制定され、7月1日施行された。この法律により設置された食品安全委員会は、国民の健康の保護が最も重要であるとの認識に立ち、食品安全行政にリスク分析手法を導入し、食品中の有害物質に対するリスク評価(食品健康影響評価)を科学的に中立公正な立場で行うことを大きな役割としている。
リスク評価とは、食品に由来する種々の危害要因について、人への健康影響を科学的に評価することである。すなわち、危害の暴露状況(暴露量、暴露頻度、暴露経路など)や暴露による人への影響(障害の種類と内容、障害の程度と影響の期間など)を評価することである。この評価結果に基づいて、厚生労働省や農林水産省といったリスク管理機関
が、基準の設定や規制の実施などの対応を行うことになっている。
本講演では、食品安全委員会の組織およびリスク分析手法の概要をはじめ、BSE 問題の知見と最近の動向、高病原性鳥インフルエンザの人への影響、いわゆる健康食品の過剰摂取による健康被害、新たな自然毒の発生など、消費者が懸念する食を介した人の健康に関わる近年の話題を提供したいと思っている。
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