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当直明け 血液固まりやすく(神戸労災病院、若手医師対象に調査)(2018年3月12日(月)神戸新聞掲載記事)

2018年3月26日

標記の件、神戸労災病院 井上信孝副院長より本研究は、労災病院を束ねる労働者健康安全機構の「過労死予防」に関する重点研究の一環で施行したものです。
神緑会の皆様に、労働者健康安全機構の社会的意義、今回の研究の背景等を含めて原稿をご送付頂きました。新聞記事とともにご紹介させて頂きます。

神戸新聞2018.03.12記事「当直明け 血液固まりやすく」 (PDF 269KB)



・・「過労死撲滅を目指した臨床研究の取り組み」 神戸労災病院 副院長 井上信孝・・

●労災病院は、研究機関である
 平成28年4月に、全国の労災病院群を統括する「労働者健康安全機構(機構)」は、労働災害に関する基礎的研究を行っている労働安全衛生総合研究所(安衛研)と統合し、法人として新しいスタートを切りました。機構は、安衛研の基礎研究機能と労災病院が持つ臨床研究機能を効率的に融合して、労働災害を予防するという社会的使命を有しています。現在機構が取り組んでいる5つの重点研究分野がありますが、私はその中で「過労死等関連疾患」に関する研究の主任研究者としての任を頂いており、3月12日付けの神戸新聞で取り上げられた研究はその一環として行われたものです。現在、本研究以外にも、全国の労災病院群のネットワークを用いた臨床研究や、神戸大学質量分析センター篠原正和先生、神戸大学薬理学 古屋敷智之教授との共同研究も展開しています。

●過労死と循環器疾患
 最近、100時間以上の時間外労働を余儀なくされていた大手広告会社の女性社員の過労自殺が大きく報道されました。過労死は1980年頃から社会問題化されており、解決すべき喫緊の課題です。2014年に施行された過労死等防止対策推進法の中で、過労死は、「過重労働による自殺による死亡、脳血管疾患若しくは心臓疾患若しくは精神障害」として、法的に定義されました。具体的な疾患としては、脳血管疾患として1)脳内出血 2)くも膜下出血3)脳梗塞 4)高血圧性脳症、心臓疾患として1)心筋梗塞2)狭心症3)心停止(心臓性突然死を含む) 4)解離性大動脈瘤です。このように、自死以外の過労死疾患は脳心血管病であり、今後、過労死撲滅における循環器学の果たす役割は大きいと考えています。

●過労状態では、血栓性が亢進する
 今回、3月12日付けの神戸新聞で取り上げられた研究は、乙井一典先生(H11年卒 現在神戸大学総合内科)との共同で行ったもので、当直明けの医師の血液サンプルと、通常勤務時の血液サンプルを用いて、血栓性を全血で評価できる機器GTTにて比較検討したものです。新規血栓性評価法GTTは神戸学院大学名誉教授山本順一郎先生が開発されたものです。検討の結果、当直明けの血液サンプルでは、血液の固まり易さが有意に亢進していることが明らかになりました。今回の研究の知見は、過労に伴う脳心血管障害の機序を説明するのものと考えられます。また、こうした血液の固まり易さを検討することにより、「疲労度」を客観的に評価できるのではと考えています。本研究は、Journal of Thrombosis and Thrombolysis誌(2018;45:222-224)に掲載されています。

●急性期病院・研究機関としての神戸労災病院
 神戸労災病院は、鷲見正敏院長のリーダシップのもと、For the Patientを旗印に急性期病院として地域医療に貢献しています。さらに上述したように研究機関としても役割も果たしており、急性期医療だけではなく臨床研究をやってみたいとの志しを持った方には、素晴らしい環境が提供できると考えています。是非一度、神戸労災病院を訪ねてみて下さい。

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